歯周病の初期症状とは?見逃しやすいサインと早めの受診の目安

歯磨きのときに血が出る。歯ぐきが少し腫れている気がする。

でも、痛くないから大丈夫だろう・・・そんなふうに思っていませんか?

実は、それこそが歯周病の典型的な初期症状なのです。歯周病は「サイレントキラー」とも呼ばれ、痛みがないまま静かに進行していく病気です。気づいたときには歯を支える骨が大きく失われ、歯がぐらつき始めている・・・そんなケースも少なくありません。

私は長年、総合病院の歯科口腔外科で多くの患者さんを診てきました。その中で、「もっと早く気づいていれば」と後悔される方を何人も見てきました。だからこそ、初期の段階で歯周病のサインに気づき、適切なケアを始めることの大切さを、多くの方に知っていただきたいと思っています。

この記事では、見逃しやすい歯周病の初期症状と、早めに受診すべき目安について、わかりやすく解説していきます。

歯周病とは?痛みがないまま進行する理由

歯周病は、歯ぐき(歯肉)や歯を支える骨が炎症を起こし、進行すると歯が抜けてしまう可能性のある病気です。原因は、プラーク(歯垢)や歯石の中に潜む細菌による感染です。適切なケアをしないと症状が悪化してしまいます。

初期症状が現れにくいメカニズム

歯周病が「サイレントキラー」と呼ばれる理由は、初期にはほとんど自覚症状が現れないためです。

炎症が歯肉の内部で静かに進行するため、痛みなどの明確な不快感がないまま悪化するケースが多いのです。歯周病菌が歯肉に攻撃を仕掛けて身体の中に侵入しようとし、身体は菌をやっつけて侵入を抑えようと攻撃します。これが歯周病のはじまりで、歯肉からの出血・発赤・腫脹などの炎症の症状です。

この中でも、出血は歯周病菌と白血球の戦いの証なのです。

歯周病と歯肉炎の違い

歯肉炎は歯茎の炎症のみの状態を指し、歯周病の前段階と言えます。

一方、歯周病は、歯肉から出血したりする初期段階から、膿が出たり歯が抜けたりする重度の状態に進んだりしていきます。これらは進行段階の違いであり、段階別の適切な対応・治療や診断が重要です。

歯肉炎の段階であれば、適切なケアで元の健康な状態に戻すことができます。しかし、歯周病に進行してしまうと、失われた骨を完全に元に戻すことは難しくなります。

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歯周病の進行ステージと症状の変化

歯周病は段階的に進行していきます。

各ステージの特徴を知ることで、ご自身の状態を把握しやすくなります。

健康な歯肉の状態

健康な歯肉は、淡いピンク色で引き締まっており、歯との境目も滑らかです。出血や腫れ、違和感は一切ありません。鏡で見たときに、歯ぐきがしっかりと歯を包み込んでいる状態が理想的です。

ステージ1:歯肉炎の症状

歯磨き時に出血する、歯茎が赤くなる、少し腫れるなどが主な症状です。

まだ骨の破壊は起こっておらず、この段階で治療すれば元に戻せます。歯垢の蓄積によって歯茎に炎症が生じ、歯磨きの際に出血が見られることがあります。この段階では、痛みがほとんどなく、症状に気づかない人も多いです。

ステージ2:軽度歯周炎の症状

歯茎が下がり始め、歯周ポケット(歯と歯茎のすき間)が深くなります。

出血や口臭が出やすくなり、歯や歯肉の境目にプラークや歯石が蓄積します。炎症が歯茎の奥にある歯周ポケットにまで達し、歯を支える骨や組織にダメージを与え始めます。

ステージ3:中等度歯周炎の症状

歯を支える骨が破壊され、歯がわずかにぐらつくことも起きてきます。

歯と歯のすき間が大きくなってきて食べ物が詰まりやすくなり、噛む力にも違和感を覚えることがあります。歯茎が腫れたり、口臭が強くなったりすることもあります。

重度歯周炎の深刻な症状

歯が大きく動揺し、膿が出る、強い口臭がするなど、日常生活に支障をきたす症状が現れます。

歯の保存が難しい場合もあり、抜歯が必要になることもあります。歯を支える骨が大幅に失われ、歯がぐらつく、抜けるなどの症状が現れます。

見逃しやすい歯周病の初期症状チェックリスト

歯周病の初期症状は痛みを伴わないことが多いため、自分では気づきにくいものです。

以下のチェックリストで、ご自身の状態を確認してみてください。

歯肉の見た目に関する症状

健康な歯ぐきはピンク色で引き締まっていますが、炎症が起こると赤みを帯びて腫れてきます。

・歯肉が赤くなっている

・ふくらみや腫れがある

・丸みを帯びてブヨブヨしている

鏡でチェックし、以前より腫れぼったくなっていないか確認してみましょう。歯肉の変色は、炎症が起きているサインです。

歯磨き時に現れる症状

歯周病の初期段階では、歯を磨いたときやフロスを使用したときに歯ぐきから出血することがよくあります。

・歯磨きやフロス使用時に血が出る

・柔らかい歯ブラシでも痛みを感じる

・違和感が続く場所がある

出血が続く場合は、放置せずに歯科医院で診察を受けることをおすすめします。多くの人が「強く磨きすぎたせいかも」と思いがちですが、歯茎が健康であれば、少し強めに磨いても出血は起こりません。

口腔内の感覚に関する症状

歯周病が進行すると、細菌が増殖して独特な口臭を引き起こします。

・朝起きた時に口がネバネバする

・慢性的な口臭が気になる

・食事の味が変わったように感じる

歯磨きをしてもすぐに口臭が気になる場合は、歯周病のサインかもしれません。

歯の状態に関する症状

歯ぐきに軽い違和感やムズムズした感覚があるのも、初期の歯周病の兆候です。

・冷たいものがしみる

・歯が少し動く感じがする

・噛み合わせが変わった気がする

特に、歯ぐきが「しまりがない感じ」がする場合は要注意です。

危険信号となる進行した歯周病の症状

以下の症状が現れた場合は、歯周病がかなり進行している可能性があります。

すぐに歯科医院を受診してください。

歯肉からの膿の排出と強い口臭

膿の排出は、歯周組織が深く破壊されているサインです。

強烈な口臭を伴う場合もあり、早急な治療が必要です。膿が出ているということは、歯周ポケットの奥深くで感染が広がっている証拠です。

歯のぐらつきと噛む時の痛み

歯が動く、噛むと痛むという症状は、歯を支える骨が大きく失われている証拠です。

この段階になると、歯の保存が難しくなる可能性も高まります。歯がぐらつき始めたら、できるだけ早く専門的な治療を受けることが大切です。

歯肉の大幅な退縮と歯が長く見える現象

歯ぐきが下がって歯が長く見えるのは、歯を支える骨が溶けているサインです。

歯の根元が露出すると、知覚過敏も起こりやすくなります。見た目にも影響が出るため、気づきやすい症状の一つです。

歯並びの変化と歯間の隙間の拡大

歯周病が進行すると、歯を支える力が弱まり、歯が移動してしまうことがあります。

以前はなかった歯と歯の隙間ができたり、歯並びが変わったりした場合は、早めの受診が必要です。

早めの受診が必要な目安とタイミング

どのような症状が現れたら、歯科医院を受診すべきでしょうか?

軽度症状での自宅ケアとその限界

歯肉炎の段階であれば、正しい歯磨きとフロスの使用で改善できる可能性があります。

しかし、自己判断で放置すると、症状が進行してしまうリスクがあります。出血や腫れが1週間以上続く場合は、自宅ケアだけでは不十分と考えられます。

歯科医院での詳細検査の内容

歯科医院では、歯周ポケットの深さを測定し、歯周病の進行度を正確に診断します。

レントゲン撮影により、骨の状態も確認します。プロービング検査と呼ばれる検査で、歯周ポケットの深さを測り、出血の有無や歯のぐらつきもチェックします。

受診すべき症状の目安

以下のような症状がある場合は、早めに受診してください。

・歯磨き時の出血が1週間以上続く

・歯ぐきの腫れや赤みが改善しない

・口臭が気になるようになった

・歯がしみる、ぐらつく

・歯ぐきから膿が出る

これらの症状は、歯周病が進行しているサインです。

定期検診の重要性と受診間隔の目安

歯周病は自覚症状が少ないため、定期的に歯科医院でチェックすることが重要です。

3〜6ヶ月に1回の歯科検診を受けることで、早期発見・早期治療が可能になります。専門的なクリーニング(スケーリング)を行うことで、自分では取り除けない歯石を除去し、歯周病の進行を防ぐことができます。

歯周病が全身に及ぼす影響

歯周病は、口の中だけの問題ではありません。

炎症によって出てくる毒性物質が歯肉の血管から全身に入り、様々な病気を引き起こしたり悪化させる原因となります。

心血管疾患との関連

歯周病原因菌などの刺激により動脈硬化を誘導する物質が出て、血管内にプラーク(粥状の脂肪性沈着物)が出来て血液の通り道は細くなります。

プラークが剥がれて血の塊が出来ると、その場で血管が詰まったり血管の細いところで詰まります。狭心症や心筋梗塞、脳梗塞のリスクが高まることが分かっています。

糖尿病との相互関係

歯周病は糖尿病の合併症の一つと言われてきました。

実際、糖尿病の人はそうでない人に比べて歯肉炎や歯周炎にかかっている人が多いという疫学調査が複数報告されています。さらに最近、歯周病になると糖尿病の症状が悪化するという逆の関係も明らかになってきました。

歯周病菌の死骸の持つ内毒素は、血糖値を下げるホルモン(インスリン)の働きを邪魔してしまうのです。歯周病治療で糖尿病も改善することも分かってきています。

誤嚥性肺炎との関連

歯周病菌のなかには、誤嚥により気管支から肺にたどり着くものもあり、高齢者の死亡原因でもある誤嚥性肺炎の原因となっています。

口腔ケアをしっかり行うことで、誤嚥性肺炎のリスクを下げることができます。

その他の全身疾患への影響

歯周病は、早産・低体重児出産・肥満・アルツハイマー病などにも関与している可能性が示唆されています。

歯周病の予防・治療を行うことで、全身の様々な病気のリスクを下げることが可能です。日々の歯磨き・口腔ケアを見直し、全身の健康につなげましょう。

歯周病の早期対策と予防のポイント

初期段階の歯周病は、適切なケアを行うことで進行を防ぎ、改善することが可能です。

正しい歯磨きを実践する

歯周病を防ぐためには、適切なブラッシングが欠かせません。

・歯と歯ぐきの境目を意識して磨く

・力を入れすぎず、やさしくブラッシング

・歯ブラシの交換は1ヶ月に1回が目安

・フッ素配合の歯磨き粉を使用する

特に、電動歯ブラシを活用すると、効率的に歯垢を除去できるためおすすめです。

フロスや歯間ブラシを取り入れる

歯と歯の間は歯ブラシだけでは汚れが落としにくいため、デンタルフロスや歯間ブラシを活用しましょう。

・フロス:細かい歯の隙間の汚れを除去

・歯間ブラシ:歯ぐきに優しく、広めの隙間の清掃に適している

毎日のケアに取り入れることで、歯周病の予防効果が格段に向上します。

定期的な歯科検診とクリーニング

定期検診やクリーニング、毎日の丁寧な歯磨きが欠かせません。

また、歯周病は誤嚥性肺炎や糖尿病、心疾患や脳疾患などの重篤な病気の要因にもなるので、気になる症状がありましたら早めの受診をおすすめします。

生活習慣の見直し

喫煙は歯周病のリスクを大きく高めます。

禁煙することで、歯周病の進行を抑えることができます。また、バランスの取れた食事や十分な睡眠、ストレス管理も、歯周病予防に役立ちます。

まとめ

歯周病は、初期の段階では痛みが少なく、自覚しにくいため、多くの人が見逃しがちです。

しかし、歯ぐきの腫れや出血、口臭などのサインがある場合は、すでに歯周病が始まっている可能性があります。

適切なセルフケアと定期的な歯科検診を行うことで、歯周病の進行を防ぎ、健康な歯を長く保つことが可能です。また、歯周病は全身の健康にも影響を及ぼすため、早めの対策が重要です。

「歯ぐきの腫れや出血が気になる」「正しいケア方法を知りたい」という方は、ぜひ一度ご相談ください。

当院では、皮膚科と連携した総合的な診療を行っており、有病者の方にも安心して治療を受けていただけます。土曜日も診療しておりますので、お気軽にお越しください。

よく歯科では、歯周病の早期発見・早期治療に力を入れています。気になる症状がある方は、お気軽にご相談ください。

著者情報

よく歯科 院長 伊藤 翼

経歴

2007年3月 北海道医療大学歯学部歯学科 卒業

2007年4月 広島大学病院 歯科研修医

2012年4月 広島大学病院 顎・口腔外科 医員

2015年4月 JA尾道総合病院 歯科副部長

2022年4月 JA尾道総合病院 歯科主任部長

資格・所属

広島大学 博士号

歯科研修指導医

日本口腔外科学会 認定医

緩和ケア研修指導医師

日本口腔科学会 認定医

日本嚥下リハビリテーション学会 認定士

日本抗加齢医学会 専門医

日本口腔外科学会

日本口腔科学会

日本緩和医療学会

日本嚥下リハビリテーション学会

日本経腸静脈栄養学会

日本スポーツ歯科医学会

日本口腔ケア学会

日本抗加齢医学会

広島県歯科医学会

 
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