
むし歯が進行して「神経まで達している」と言われた経験はありませんか。
激しい痛みに悩まされ、夜も眠れない日々を過ごしている方もいらっしゃるかもしれません。
むし歯が神経に達した状態は、適切な治療を行わなければ歯を失うリスクが高まります。しかし、根管治療という専門的な処置によって、かつては抜歯するしかなかった歯でも残せる可能性が広がっています。
この記事では、むし歯が神経に達した場合の症状、治療の流れ、そして痛みへの対処法について、歯科口腔外科の専門医として17年間の臨床経験を持つ立場から詳しく解説します。
むし歯が神経に達した状態とは
むし歯が神経に達した状態を正しく理解するためには、まず歯の構造と、むし歯がどのように進行していくのかを知る必要があります。
歯の構造と神経の役割
歯は外側から順に、エナメル質、象牙質、そして最も内側に歯髄と呼ばれる組織で構成されています。
この歯髄には神経や血管が通っており、歯に栄養を供給し、痛みを感じる役割を担っています。
歯髄神経は脳に強い痛みを伝える神経のみで構成されているため、知覚過敏でも虫歯でも同じように痛みを感じます。
歯髄は通常、エナメル質と象牙質に保護されて無菌な状態で存在しています。しかし、むし歯が進行すると細菌が歯髄に到達し、炎症を引き起こすのです。

むし歯の進行段階
むし歯は進行度によってC0からC4まで分類されます。
C0(初期むし歯)は、歯の表面のエナメル質が溶け始めて白く濁っている状態です。この段階では穴は開いておらず、痛みもありません。適切なブラッシングやフッ素塗布で改善する可能性があります。
C1(エナメル質のむし歯)になると、エナメル質がさらに溶けて黒ずんできます。冷たいものがしみることがありますが、まだ強い痛みはありません。
C2(象牙質のむし歯)では、象牙質まで進行しています。冷たいものや甘いものがしみるようになり、時々痛むこともあります。
C3(神経まで達したむし歯)が、まさに神経に達した状態です。熱いものがしみるようになり、何もしていなくてもズキズキと激しく痛むようになります。
C4(歯根のみ残った状態)まで進行すると、歯の大部分が溶けてなくなり、歯根まで虫歯に侵された状態になります。神経が死んで一時的に痛みはなくなりますが、歯根部に膿が溜まると再び痛みが出ます。
神経に達したむし歯の症状
神経に達したむし歯には、特徴的な症状があります。
冷たいものや温かいものがしみる、何もしていなくてもズキズキと痛む、夜間に痛みが増す、といった症状が現れます。
これらは不可逆性歯髄炎の兆候です。歯髄への細菌感染が深部まで達していて、正常な状態に戻すことができない状態を指します。
放置すると、歯髄はやがて壊死してしまいます。そうすると根管内の細菌感染がさらに拡大し、やがて根尖周囲組織まで感染が広がります。この状態を根尖性歯周炎といいます。
根尖周囲組織に炎症が波及すると、フィステルと呼ばれる排膿路が形成されることがあります。これは歯ぐきにポツリとできたおできのようなふくらみで、膿の出口となります。
根管治療とは何か
神経に達したむし歯の治療として行われるのが根管治療です。かつては抜歯以外に選択肢がありませんでしたが、根管治療によって歯を残せる可能性が高くなっています。

根管治療の目的と重要性
根管治療とは、歯根の治療のことです。
むし歯が重症化すると、歯根の中の管(根管)にまで感染が広がって炎症を起こし、強い痛みが出ます。
根管治療では、むし歯菌に感染した根管内部の神経を取り除き、神経の通っていた根管の中を殺菌・消毒します。そして薬剤を詰めて密閉することで無菌に近い状態にして再発を防ぎます。
根管治療が重要なのは、この処置が歯を残すための最後の砦だからです。根管内の神経がしっかり取られなかったり、治療を放置して根管内にばい菌が入ったり、密閉する薬がしっかりつまっていなかったりすると、根管内が感染してしまい痛みや腫れなどのトラブルが生じることがあります。
根管治療の流れ
根管治療は複数回の通院が必要になることが一般的です。
まず、感染した神経や歯髄を除去します。この処置を抜髄といいます。次に、根管内部を専用の器具で清掃し、殺菌・消毒を行います。
根管は細くて複雑な構造をしているため、100%虫歯菌を取り除くことは容易ではありません。1回の治療でうまくいけばいいのですが、確実に治して再発を防ぐには数回にわたって通院して検査を行う必要があります。
根管内が十分に清潔になったことを確認したら、薬剤を詰めて密閉します。その後、歯を補強する処置(支台築造)を行い、最終的にクラウン(被せ物)を装着します。
根管治療の成功率
根管治療の成功率は、治療のコンセプトを守って行うかどうかで大きく変わります。
保険診療内での根管治療では、将来的に根尖性歯周炎に罹患する可能性が40%~60%であり、実に根管治療を行った歯の2本に1本が根尖性歯周炎に罹患しているという現状があります。
一方で、コンセプトを守った根管治療を行うことで、歯髄壊死の場合で80%以上、歯髄炎の場合で90%以上の成功率になります。
成功率を高めるためには、徹底的な洗浄、無菌的処置、緊密な封鎖という3つの条件をすべて完璧に行う必要があります。そのためには十分な施術時間を確保することが重要です。
神経を残せるケースと抜く必要があるケース
むし歯が神経に達した場合でも、すべてのケースで神経を抜く必要があるわけではありません。状態によっては神経を残せる可能性もあります。

可逆性歯髄炎と不可逆性歯髄炎
歯髄の状態は、可逆性歯髄炎と不可逆性歯髄炎に分類されます。
可逆性歯髄炎は、歯髄への細菌感染が一部分、もしくは無い状態であり、適切な処置を施すことで正常歯髄に戻すことができる可能性が高い状態です。
不可逆性歯髄炎は、歯髄への細菌感染が歯髄の深部まで達していて、治療法としては歯髄の除去が望ましい状態です。そのまま放置した場合、歯髄はやがて壊死し根尖周囲組織まで炎症が波及することで、根尖性歯周炎の罹患につながります。
診断のプロセス
歯髄が可逆性歯髄炎なのか、不可逆性歯髄炎なのかを確実に診断するためには、組織切片のサンプルが必要になるため、事実上不可能です。
そのため、歯髄の診断では冷たいものや温かいものなどに対する歯髄の反応を見極めることが重要になります。
レントゲン、触診、温度診などの診査結果を総合的に踏まえて、現在の歯髄の状況を診断するためには、十分に診査時間を確保することが必要になります。
生活歯髄保存療法
可逆性歯髄炎と診断された場合、神経を残すための「生活歯髄保存療法(歯髄保存療法)」という治療法があります。
この治療法では、感染した部分のみを除去し、残った健康な歯髄を保存します。神経を残すことで、歯に栄養が供給され続け、歯の寿命を延ばすことができます。
ただし、この治療法が適用できるかどうかは、歯髄の状態や感染の程度によって慎重に判断する必要があります。
痛みが出た時の応急処置
むし歯が神経に達して激しい痛みが出た場合、すぐに歯科医院を受診することが最も重要です。しかし、夜間や休日など、すぐに受診できない場合の応急処置についても知っておくと安心です。
痛みを和らげる方法
市販の鎮痛剤を服用することで、一時的に痛みを和らげることができます。
ただし、鎮痛剤はあくまで対症療法であり、根本的な治療にはなりません。痛みが治まったからといって放置せず、必ず歯科医院を受診してください。
患部を冷やすことも効果的です。冷たいタオルや保冷剤を頬の外側から当てることで、炎症を抑え、痛みを軽減できます。ただし、直接氷を当てると冷たすぎて逆効果になることがあるので注意が必要です。
避けるべき行動
痛みがある時は、患部を刺激しないことが大切です。
熱いものや冷たいもの、甘いものは避けましょう。また、患部を舌や指で触ったり、強く噛んだりすることも控えてください。
お酒を飲んだり、激しい運動をしたり、長時間の入浴をしたりすると、血行が良くなって痛みが増すことがあります。安静にして過ごすことが重要です。
早期受診の重要性
痛みが一時的に治まったとしても、むし歯が自然に治ることはありません。
むしろ、痛みがなくなったのは神経が死んでしまった可能性があり、その場合は感染がさらに広がっている危険性があります。
何度も治療を中断せず、最後までしっかり治療を受けることが、歯を残すために最も重要です。根管治療が必要な状態は、抜歯になるかどうかの瀬戸際ですので、治療を中断せず、最後までしっかり治療を受けていただきたいと思います。
よく歯科での根管治療の特徴
福山市のよく歯科では、長年の歯科口腔外科医としての臨床経験を活かし、高い水準の根管治療を提供しています。

専門的な診療体制
院長は総合病院の歯科口腔外科で長年勤務した経験があり、有病者の方の歯科治療も多く経験しています。
その経験を活かして、持病のある方にも安心して歯科治療を受けていただけるように、体調に配慮しながら診療を心がけています。
服用中のお薬なども含めて初診時にしっかりお話をうかがい、お一人お一人に合った治療を行います。検査の結果、医科をはじめとする他分野の治療を優先するべきだと判断した場合は、地域の他院や病院と連携して対応します。
皮膚科併設の強み
よく歯科は皮膚科と併設しているという大きな特徴があります。
この強みを活かし、金属アレルギーの検査や口腔内の炎症による掌蹠膿疱症のような疾患の診断・治療が可能です。
また、口内炎から口腔カンジダ症、扁平苔癬や白板症のような前がん病変まで、皮膚科と連携して診査診断・治療を行っています。
メタルフリー治療への対応
根管治療後の修復処置では、金属を使わない「メタルフリー治療」を推奨しています。
陶器でできたセラミックなどの素材であれば、金属アレルギーの心配がなく、むし歯にもなりにくいといったメリットもあります。
金属アレルギーをお持ちの方や、今までの治療で銀歯を入れている方など、金属アレルギーに不安をお持ちの方も安心して治療を受けていただけます。
土曜診療と連携体制
よく歯科は土曜日も診療しており、平日お忙しい方でも通いやすい環境を整えています。
診療時間は月・火・水・金曜日が9時30分から13時、14時30分から18時、土曜日は9時30分から13時、14時30分から17時です。木曜・日曜・祝日は休診です。
より専門的な検査・治療が必要だと思われる場合は、連携している高次医療機関をご紹介する体制も整えており、患者さんが安心して来院できる環境を提供しています。
まとめ
むし歯が神経に達した状態は、激しい痛みを伴い、放置すると歯を失うリスクが高まります。
しかし、根管治療という専門的な処置によって、かつては抜歯するしかなかった歯でも残せる可能性が広がっています。
重要なのは、早期発見・早期治療です。冷たいものや温かいものがしみる、何もしていなくても痛むといった症状が現れたら、すぐに歯科医院を受診してください。
根管治療は複数回の通院が必要になることが一般的ですが、治療を中断せず、最後までしっかり受けることが歯を残すために最も重要です。
よく歯科では、長年の歯科口腔外科医としての臨床経験を活かし、皮膚科併設という強みを生かした総合的な診療を提供しています。むし歯が神経に達した可能性がある方、根管治療について詳しく知りたい方は、ぜひ一度ご相談ください。
詳しい治療内容や診療時間については、よく歯科 根管治療のページをご覧ください。皆さんの大切な歯を守るため、誠心誠意診療を行ってまいります。
むし歯が神経まで達したか気になる方へ
強い痛みや、何もしていなくてもズキズキする症状が続くと不安になりますよね。初診では症状の経過を確認しながら、お口の状態や必要な検査、治療の流れをわかりやすくご案内します。 WEB予約はこちら
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著者情報

院長
伊藤 翼 (いとう よく)
皆さん、こんにちは。
このたび【よく歯科】を開院いたしました、
院長の伊藤 翼(いとう よく)です。
私は大学病院や尾道総合病院にて、17年間口腔外科の治療に携わってきました。
そのため、全身状態を把握しての歯科診療を得意としており、当院でもその経験をもとに、医科の先生方と連携を図りながら、地域の皆さんに高水準の歯科診療をご提供いたします。
また、口腔がんの診査診断・治療の経験も多いので、一般的な歯科医院では難しい症状の判別も行うことができます。
口腔がんは口内炎と間違えて発見が手遅れになることも多いので、大きな病院まで行かなくても早期発見ができるよう細心の注意を払って診療を行います。
お口の健康から、地域の皆さんの身体の健康づくりに貢献できるよう、誠心誠意診療を行ってまいります。
どうぞよろしくお願いいたします。
経歴
- 2007年3月
北海道医療大学歯学部歯学科 卒業 - 2007年4月
広島大学病院 歯科研修医 - 2012年4月
広島大学病院 顎・口腔外科 医員 - 2015年4月
JA尾道総合病院 歯科副部長 - 2022年4月
JA尾道総合病院 歯科主任部長
資格・所属
- 広島大学 博士号
- 歯科研修指導医
- 日本口腔外科学会 認定医
- 緩和ケア研修指導医師
