
「親知らずが痛い」と感じたとき、すでに手遅れになっているケースが少なくありません。
実は、親知らずのトラブルは痛みが出る前から静かに進行しています。定期検診でこまめに状態を確認することで、抜歯が必要になるリスクを大幅に下げることができます。
私は大学病院や総合病院の歯科口腔外科で17年間、数多くの親知らずの症例に携わってきました。その経験から言えるのは、「早めに気づいた人ほど、治療が軽く済む」という事実です。今回は、定期検診で確認すべきポイントと、トラブルを未然に防ぐための考え方を詳しくお伝えします。
こんなお悩みはありませんか?
- 奥歯がときどき痛むが、親知らずかどうかわからない
- 親知らずが生えているか確認したい
- 抜歯が怖くて、なかなか相談できずにいる
痛みに配慮した処置を心がけています。まずは状態を確認するだけでも構いませんので、お気軽にご来院ください。
親知らずとは何か?なぜトラブルが起きやすいのか
親知らずとは、永久歯の中で最も奥に生えてくる歯のことです。
正式には「第3大臼歯」と呼ばれ、一般的に10代後半から20代前半にかけて生えてきます。永久歯は通常15歳前後で生えそろいますが、親知らずだけは大きく遅れて萌出するため、「親に知られずに生えてくる歯」という意味でこの名がついたとも言われています。
現代人の顎は食生活の変化などにより小さくなる傾向があります。
そのため、親知らずが正常にまっすぐ生えてくる人は全体の3割程度にとどまり、残りの7割の方は斜めに生えたり、骨の中に埋まったまま(埋伏)だったりするとされています。斜めや横向きに生えると、隣の歯との間にすき間ができて細菌が繁殖しやすくなります。
その結果、起こりやすいのが「智歯周囲炎(ちしゅういえん)」です。
智歯周囲炎とは、親知らずの周囲の歯肉が炎症を起こす状態のことです。歯肉が部分的に被さったままの状態になると清掃が難しく、細菌が繁殖して腫れや強い痛み、膿が出るといった症状が現れます。一度智歯周囲炎を起こすと繰り返しやすくなり、放置すると隣の歯を支える骨が溶けるなど、深刻な影響が広がることもあります。

定期検診で歯科医が確認する親知らずのチェックポイント
定期検診は、単なるクリーニングの場ではありません。
親知らずの状態を定期的に観察することで、問題が小さいうちに対処できます。では、歯科医は定期検診でどのような点を確認しているのでしょうか。具体的なチェックポイントを解説します。
レントゲン(X線)による生え方・位置の確認
親知らずの状態は、口の中を見るだけでは判断できないことがあります。
骨の中に埋まっている場合や、神経・血管との位置関係を把握するためには、レントゲン撮影が欠かせません。親知らずの位置が深いほど、また神経(下顎管)に近いほど、抜歯の難易度が上がります。定期的にレントゲンで経過を追うことで、「今は様子を見てよい状態か」「そろそろ対処が必要か」を判断できます。
歯肉の腫れ・炎症の有無
親知らずの周囲の歯肉が赤くなっていたり、触れると痛みがあったりする場合は、炎症のサインです。
自覚症状がなくても、歯科医が視診・触診で早期に気づけることがあります。特に半分だけ歯肉から顔を出している親知らずは、歯肉との境目に汚れがたまりやすく、炎症を繰り返すリスクが高い状態です。
隣の歯(第2大臼歯)への影響
親知らずが横向きや斜め向きに生えている場合、手前の歯を後ろから押す力がかかります。
この圧力が続くと、隣の歯に虫歯が発生したり、歯並びが乱れたりすることがあります。隣の歯の状態が悪化しすぎると、親知らずだけでなく隣の歯まで失うリスクが生じます。定期検診では、隣の歯の歯面・歯根の状態も合わせて確認することが重要です。
虫歯の有無
親知らずは最も奥にある歯のため、歯ブラシが届きにくい場所です。
そのため虫歯になりやすく、しかも自分では気づきにくいという特徴があります。虫歯が大きくなってから抜こうとすると、歯がもろくなって抜歯が非常に困難になることもあります。定期的なチェックで早期に発見することが、治療の選択肢を広げることにつながります。

抜歯が必要になるケースとは?早めの判断が大切な理由
「痛くなったら抜けばいい」という考え方は、実はリスクがあります。
痛みが出るころには、親知らずだけでなく周囲の歯や骨にも影響が及んでいることが多いからです。以下のようなケースでは、抜歯を検討する必要があります。
- 親知らず周囲の歯肉の腫れを繰り返している
- 斜めや横向きに生えて、隣の歯を圧迫している
- 半分だけ露出して虫歯・口臭の原因になっている
- 親知らずが原因で手前の歯に虫歯が発生している
- 歯並びに悪影響を与えている
- 噛んだときに歯肉や頬の粘膜を傷つけている
一方で、まっすぐ正常に生えていて上下でしっかり噛み合っている場合や、完全に骨の中に埋まっていて症状がない場合は、必ずしも抜歯が必要とは限りません。
大切なのは、抜歯のメリットとデメリットをしっかり比較して判断することです。
定期検診で状態を継続的に観察していれば、「今は様子を見る」「そろそろ抜いた方がよい」という判断を適切なタイミングで行えます。痛みが出てから慌てて受診するよりも、選択肢が広がります。
定期検診の頻度はどのくらいが適切か
定期検診の頻度は、お口の状態によって異なります。
一般的には、3か月に1回程度のペースが推奨されています。歯科医院でクリーニングを行うと口腔内の細菌数は一時的に減少しますが、歯周ポケット内の歯周病菌は3か月程度で再び増殖して元の水準に戻るとされています。そのため、3か月に1回のペースが効果的とされています。
お口の状態が良好でセルフケアができている方は、半年に1回程度でも問題ない場合があります。ただし、歯周病が進行している方や汚れがたまりやすい方は、1〜2か月に1回のペースでのクリーニングが望ましいとされています。
親知らずの経過観察という観点では、特に10代後半から20代の方は要注意です。
この時期は親知らずが動きやすく、状態が変化しやすいため、定期的なレントゲン確認が特に重要になります。「症状がないから大丈夫」と思っていても、骨の中で問題が進行していることがあります。
どのくらいの頻度で受診すべきか迷っている方は、ぜひ一度ご相談ください。お口の状態を確認した上で、最適なペースをご提案します。

親知らずトラブルを未然に防ぐための日常ケア
定期検診と並行して、毎日のセルフケアも大切です。
親知らずは奥にあるため、通常の歯磨きでは汚れが残りやすい部位です。以下のポイントを意識することで、トラブルのリスクを下げることができます。
親知らず周囲の磨き方
歯ブラシを縦に持ち、毛先を親知らずの方向に向けて小刻みに動かすのが基本です。
タフトブラシ(ヘッドが小さい歯ブラシ)を使うと、奥まで届きやすくなります。歯間ブラシやデンタルフロスも組み合わせると、歯と歯の間の汚れをより効果的に除去できます。磨き方に不安がある方は、定期検診時に歯科衛生士にブラッシング指導を受けることをおすすめします。
口腔内の異変に気づいたら早めに受診を
「なんとなく奥歯のあたりが気になる」という感覚を大切にしてください。
親知らずのトラブルは、最初はわずかな違和感から始まることが多いです。痛みが強くなってから受診すると、炎症が広がっていて抜歯の難易度が上がっていたり、周囲の歯にも影響が出ていたりするケースがあります。気になることがあれば、痛みが強くなる前に早めにご相談ください。
全身の健康状態との関係も見逃さない
口腔内の炎症は、全身の健康に影響することがあります。
歯周病が誤嚥性肺炎・糖尿病・心疾患・脳疾患などの全身疾患と関連することは広く知られています。親知らず周囲の慢性的な炎症も、口腔内環境の悪化を招き、全身への影響につながる可能性があります。持病のある方は特に、口腔内の状態管理が重要です。当院では有病者の方にも配慮した診療を行っており、服薬中の方も安心してご相談いただけます。
親知らずのことで気になることがあれば、まずはお気軽にご相談を。相談だけでもOKです。

よく歯科での親知らず診療について
当院では、歯科口腔外科の専門的な視点から親知らずの診査・診断・治療を行っています。
私自身、広島大学病院の顎・口腔外科やJA尾道総合病院の歯科口腔外科で長年にわたって診療に携わってきました。横向きや斜め向きに生えて炎症を起こしやすいケースにも対応しており、難治症の場合は専門の医療機関への紹介も可能です。
口腔がんの早期発見にも対応
口腔がんは、口内炎と間違えて発見が遅れるケースが少なくありません。
当院では口腔がんの診査診断・治療経験も豊富なため、一般的な歯科医院では難しい症状の判別も行うことができます。「口内炎がなかなか治らない」「舌や粘膜に気になる変化がある」という方も、ぜひご相談ください。定期検診の際に合わせて確認することができます。
粘膜疾患・皮膚科との連携診療
当院は皮膚科と併設しているため、口腔粘膜疾患についても皮膚科と連携して診査診断・治療を行えます。
口内炎から口腔カンジダ症、扁平苔癬や白板症のような前がん病変まで、幅広い粘膜疾患に対応しています。歯科だけでは判断が難しいケースも、皮膚科と連携することでより正確な診断が可能です。
有病者の方も安心して受診できる環境
持病がある方や服薬中の方も、ぜひご相談ください。
総合病院での勤務経験を活かし、全身状態を把握した上で安全に診療を行います。必要に応じて医科の先生方と連携を図りながら、お一人おひとりに合った治療を提供します。
まとめ:定期検診が親知らずトラブルを防ぐ最善策
親知らずのトラブルは、痛みが出てから気づくことが多いものです。
しかし、定期検診でこまめに状態を確認することで、問題が小さいうちに対処できます。レントゲンによる位置確認、歯肉の炎症チェック、隣の歯への影響確認——これらを定期的に行うことが、抜歯リスクを軽減する最善策です。
「症状がないから大丈夫」ではなく、「症状が出る前に確認する」という意識が大切です。
よく歯科では、福山市松永駅から徒歩13分の場所で、土曜日も含めて診療を行っています。親知らずの状態が気になる方、定期検診をまだ受けていない方は、ぜひお気軽にご相談ください。
あなたの口腔の健康を守るために、誠心誠意サポートいたします。
▼ 診療内容の詳細はこちらからご確認いただけます。
親知らずの状態確認は定期検診のタイミングで
初診ではまずレントゲンでお口の状態を確認します。抜歯が必要かどうかも、その場でご説明します。
受付時間:9:30〜13:00 / 14:30〜18:00
著者情報
院長
伊藤 翼 (いとう よく)

皆さん、こんにちは。
このたび【よく歯科】を開院いたしました、
院長の伊藤 翼(いとう よく)です。
私は大学病院や尾道総合病院にて、17年間口腔外科の治療に携わってきました。
そのため、全身状態を把握しての歯科診療を得意としており、当院でもその経験をもとに、医科の先生方と連携を図りながら、地域の皆さんに高水準の歯科診療をご提供いたします。
また、口腔がんの診査診断・治療の経験も多いので、一般的な歯科医院では難しい症状の判別も行うことができます。
口腔がんは口内炎と間違えて発見が手遅れになることも多いので、大きな病院まで行かなくても早期発見ができるよう細心の注意を払って診療を行います。
お口の健康から、地域の皆さんの身体の健康づくりに貢献できるよう、誠心誠意診療を行ってまいります。
どうぞよろしくお願いいたします。
経歴
- 2007年3月
北海道医療大学歯学部歯学科 卒業 - 2007年4月
広島大学病院 歯科研修医 - 2012年4月
広島大学病院 顎・口腔外科 医員 - 2015年4月
JA尾道総合病院 歯科副部長 - 2022年4月
JA尾道総合病院 歯科主任部長
資格・所属
- 広島大学 博士号
- 歯科研修指導医
- 日本口腔外科学会 認定医
- 緩和ケア研修指導医師
